amazonはファッション・アパレル市場を攻略することはできるのか?!

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元々は本のオンライン販売として始まったamazonでしたが、日用雑貨から食品などあらゆるものに配達する商品の幅を広げ、さらにはAWSでクラウドビジネスに乗り出したり、Kindleで電子機器の製造に乗り出したり、実店舗をオープンさせたりと、様々

な業種を広げ続けてきました。amazonが乗り込む業界では過酷な「生存競争」が繰り広げられるわけですが、飽くなき成長を求めるamazonは次の成長産業として「ファッション」に狙いを定め、準備を着々と進めています。

amazonのアパレル事業

Slice Intelligenceの主席アナリストのケン・カッサー氏は、「amazonは最も巨大なアパレル販売業者のひとつで、アメリカ国内で3000億ドル(約33兆円)あるアパレル市場に大きな影響を与えている」と述べており、amaozonのアパレル事業の成長を認めています。アパレル用品の利益率は、amazonが取り扱う商品の中でも高いことから、アパレル販売の収益アップによって、amazon株は1株あたり25セント分の利益を底上げすると見積もってます。

利益率の低い業態のオンライン通販がメイン事業のamazonですが、ジェフ・ベゾスCEOは、新しい市場に乗り出す場合に「長期戦」になることを恐れないことで知られています。入念に下調べをした上で、いざ戦いを挑むと、失敗や苦難に負けることなくジリジリと業界リーダーを追い詰めて、消耗戦の果てに市場を奪うという粘り強い戦略を採ることをいといません。

ファッションに対するamazonのこれまでの動きをたどると、「少なくともレディスウェアのe-tailer Shopbopを買収した2006年以降、amazonはファッション業界に夢中だ」とThe Vergeは評価しています。2012年にファッション展示会のCostume Institute exhibitionを開催し、2015年にはNew York Fashion Week: Men’sを立ち上げ、インドでamazon India Fashion Weekを、東京でamazon Fashion Week Tokyoを支援するなど、ファッション業界に対する着実な取り組みが見られます。

しかし、現時点でのamazonの立ち位置は、「アパレル」業界では成功を収めていますが、「ファッション」業界ではまだまだ弱小ともいえる存在です。シャツや靴下などの日用衣料を販売するアパレルと、ドレスや靴、バッグなど比較的高級な商品を扱うファッションとはまったく別物であり、ファッションの世界ではamazonは実績がないに等しい新参者、ということです。小売業のアナリストやファッション業界の重鎮たちは、amazonが「ファッションアイテムを売るための最適な場所」になれるかどうかについて懐疑的です。その理由は、amazonにファッショナブルな要素がないからだとのこと。amazonが良い成績を収めるアパレルと、amazonが得意ではないファッションとの間にある大きな違いは、「感情」や「感性」であり、実用的な目的のアパレルとは違い、ファッションでは主観的な自己表現という目的があるというわけです。

amazonにとって比較的、利益率の高いアパレルですが、ファッション関連商品の利益率の高さはアパレルの比ではありません。そのため、仮にamazonがファッション商品の販売でも成功を収めるとすれば、莫大な利益をもたらすのは明らかであり、amazonが狙いを定めたファッション業界攻略に慎重に動いていても不思議ではありません。

「ファッション業界で成功を収めるためには、顧客との間に『感情的なつながり』を確立することが不可欠だ」とカッサー氏は述べています。この感情的なつながりは、一朝一夕にして確立されるものではなく、そこでamazonは、ファッション展示会をサポートするなど地道な活動を続けてきたと考えられます。

2017年5月にamazonはNBAのシカゴ・ブルズのドウェイン・ウェイド選手とのコラボレーションを発表しました。ファッションリーダーとしても人気のウェイド選手は、自身のブランドを冠する商品を多数持っていますが、amazon Fashion内に「ウェイドショップ」を持つことになりました。ここから分かるとおり、amazonは地道に顧客との「感情的なつながり」作りに励んでいます。

アパレル分野での新サービス

amazonは2017年初にプライベートレーベルのアパレルブランドを7つ立ち上げており、男性用のアクセサリー、女性用のドレス・ハンドバッグを販売しています。さらに2017年4月には独自のランジェリーラインを追加しています。

さらに、アパレル分野での新サービス「Prime Wardrobe(プライムワードローブ)」を発表しました。プライムワードローブはamazonの有料会員であるプライム会員が対象で、購入前の服を自宅で試着できるというものです。

ファッションカテゴリーにある商品の中から3点以上の商品を選択すると、専用ボックスで商品が送られてきます。利用者は自由に試着し、気に入らなかったものは同じボックスに入れて返送することができます。返送料は無料で、気に入った商品はそのまま購入することも可能です。

3点以上を購入すれば価格は10%割引に、5点以上を購入すれば20%割引になります。購入した商品以外には一切お金がかからないので、有料会員は気軽に利用することが可能です。なお、試着できる期間は1週間となります。

「Prime Wardrobe(プライムワードローブ)」

無料で試着・返品ができるサービスは世の中に既に存在していますが、圧倒的な規模を持つamazonがこのサービスに乗り出した意味は大きいです。amazonがアパレル分野に参入した本当の狙いは、これまで人が担っていたアパレル業務のAI化にあります。

Alexaにファッション指南をしてもらえるカメラ付きEcho「Echo Look」の発売は確実にファッション向けの取り組みとして進んでおります。

360度全方向で3Dスキャンできるカメラが付いた「amazon Echo Look」が登場し、機械学習でどっちの服が似合っているかAlexaがアドバイスしてくれます。

実はamazonは同じタイミングで、あるAIツールをリリースしています。それは会話型AIスピーカー「amazon Echo(アマゾンエコー)」の機能拡張版「Echo Look(エコールック)」です。

エコーは話しかけるだけで買い物をすることができたり、必要な情報を入手することができるAI端末で、英語圏では既に2500万人以上の利用者がいます。会話側AI市場におけるエコーのシェアは75%で、今のところamazonの独壇場となります。

エコールックは、そのエコーの機能に加え、全身写真を撮影する新しい機能を搭載しました。カメラやフラッシュなどが内蔵されており、例えば「写真を撮って」などと話しかけると、全身写真を自動で撮影してくれます。背景は自動で処理されるので、すこしばかり散らかった部屋でもきれいな全身像を撮影することが可能となっております。価格は199.99ドルで、2017年5月から順次出荷を開始しています。

 

ATカーニーのリテール部門コンサルタントのマニク・アリヤパディ氏は、amazonがファッション分野で強大な存在になるために必要なポイントを3つ挙げており、そのうちの2つは「デザインや創造性に優れた才能のある人材をそろえ、自由に実験的な取り組みをさせること」「実店舗を持つこと」。実店舗は「ブランドの遊び場」としてクリエイティブな人材に役立つそうです。

カッサー氏をはじめとして、「amazonがファッション業界では成功することは非常に難しい」と考える専門家は多いようですが、これまで疑問や批判を跳ね返すかのように新ジャンルで成功してきたamazonが、大きな利益の見込めるファッション分野で成功できるのか、引き続き注目すべきなのではないでしょうか。

洋服の買い方が変わる

近年ではSNSに全身写真をアップしたいと考える人も多いと思いますが、全身写真を自撮りするのは意外と難しいものですよね。エコールックでは、撮影した写真が自動的にクラウド上に保存されてしまうので、プライバシーについて懸念する声もあがっていますが、全身写真を美しく撮れるという魅力はやはり大きいものですよね。

専用アプリを使うと、自身のファッションチェックをすることもできます。2種類の写真をアップすると、色やデザインをシステムが自動的に解析し、どちらがよいのかをアドバイスしてくれます。着る服に迷ったときにはありがたいサービスかもしれません。

エコールックとプライムワードローブは、当然のことながらセットで考えるべきものです。両者が普及すれば、エコールックを使って最適なファッションをAIに提案してもらい、該当する商品をプライムワードローブ経由で購入するという一連の流れが成立することになります。

洋服を返品する理由としてもっとも多いのは、サイズが合わないことだと言われています。エコールックには、大量の全身写真のデータが蓄積されているので、使えば使うほど、サイズが合わずに返品するという確率も減ってくるでしょう。

もしもこの一連のサービスが本格的に普及した場合、洋服の買い方が一変する可能性が出てきます。季節の変わり目ごとに、どんな洋服が必要なのかを考え、個別商品ごとにお店を回って探すというのがこれまでの一般的な買い方でした。しかしAIがコーディネーター役となり、自動的に似合う洋服が送られてきて、必要なものだけ返品すればよいということであれば、一定数の人がこうしたサービスにお任せしてしまう可能性は高いのではないでしょうか。

ショップ側からすれば脅威にもなる

アパレル業界では、一定金額を支払うと、自分に似合いそうな服が送られてきて、それをレンタルできる新サービスが拡大しています。今のところ、過去のレンタル履歴などからスタイリストが洋服をチョイスするという人海戦術が中心ですが、こうした作業はかなりの部分をAI化できます。

プライムワードローブは、都度、商品を購入するシステムですが、このサービスは月額固定料金制との親和性が高いです。毎月、あるいは季節ごとに洋服のパッケージが送られてくるサービスがスタートするのは時間の問題なのではないでしょうか。

そうなってくると、洋服を購入する行為とレンタルする行為の垣根は限りなく低くなってきます。最終的には新品、何度か返品された新古品、中古品という3つの商品が1つの事業者の中で循環する一種のエコシステムが完成します。

利用者の購入形態が変わっても、洋服を作る機能は必要なので、メーカーという業態は維持されることになりますが、ショップ(小売店)は大きな戦略転換を余儀なくされるかもしれません。